第59回三省堂サイエンスカフェ
掲載日:2014年12月13日
テーマ | 系統樹というアート:目で見る多様性,デザイン,インフォグラフィクス |
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開催日 | 2014年12月13日(土) |
開催時間 | 午後3時から4時10分まで |
開催場所 | 三省堂書店神保町本店2階 UCC カフェコンフォート |
参加料 | 500円(ドリンク代を含む) |
講師 | 独立行政法人農業環境技術研究所 上席研究員 |
コーディネーター | 東京大学海洋アライアンス上席主幹研究員 |
テーマの内容
生き物の多様性を研究対象とする分類学と系統学は,生き物に関する知見や情報を「目に見える」ように体系化してきた歴史をもっています.生物多様性をその進化や系統にもとづいて論じるようになったのは確かに19世紀以降のことです.しかし,分類や系統を視覚化するためのさまざまな方法,たとえばチェイン(=連鎖)やツリー(=系統樹)あるいはネットワーク(=マップ,チャート)などの図表は,二千年以上前までさかのぼるルーツをもっていることが知られています.神による被造物を下等な存在から高等な人間へとつながる「存在の大いなる連鎖」として図示したのはプラトン以来の観念史の伝統でした.現在ではチャールズ・ダーウィンやエルンスト・ヘッケルに結びつけて理解されることが多い系統樹も,その図像的起源はキリスト教神学から中世スコラ哲学が支配した時代にあります.また,カール・フォン・リンネ以降の博物学者たちが動植物の多様性パターンを表示するために用いた多くのマップやチャートなどの視覚化方法は,けっして生物だけに限定されることなく,言語・写本・様式・文化などさまざまな対象に適用されてきました.これらの分類チャートや系統ダイアグラムを図像学的に見直すことにより,生物などの対象物と知見を整理として理解するための視覚化ツールのもつ意義と役割を再考察できるでしょう.存在の多様性を図示化することは,われわれ人間のもつ直感的な認知的理解能力に頼りつつ,多様性の分類パターンと系統プロセスへの理解を深める機能を果たしています.現代社会の中で,大量のデータをいかに効率的に可視化するかは情報グラフィクスの観点から重要なテーマとみなされています.その長い歴史の中で分類学や系統学が試行錯誤してきた多様性を理解するための視覚的方法の数々は現在にも通用する選択肢を提示しているといえるでしょう.今回は,分類と系統を視覚化するために過去に用いられてきたいろいろな図表をお見せしながら,生物多様性を目で見る意味についてお話しします.
【著書】 『系統樹曼荼羅:チェイン・ツリー・ネットワーク』(共著,2012年,NTT出版)
『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』(編著,2012年,勁草
書房)
『系統樹思考の世界』(2006年,講談社)
『分類思考の世界』(2009年,講談社)など.
【訳書】 キャロル・キサク・ヨーン
『自然を名づける:なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』 (共訳,
2013年,NTT出版)
エリオット・ソーバー
『過去を復元する』(2010年,勁草書房)など.
参加者の声
・とても面白く参考になりました。ありがとうございました。
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