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「テロルの決算」 沢木耕太郎著

掲載日:2021年11月7日

[ロング・ロング・ロングセラー]

ノンフィクションとは史実や記録に基づいた文章です。小説が架空の物語であるのと反対に実際にあった話です。粗々ですが日本のノンフィクションは綿密な取材に基づいたルポルタージュの柳田邦男さん、反体制的、社会批判的で反抗精神旺盛な立花隆さん、そして1960年代後半のアメリカでのニュージャーナリズムに影響を受けた沢木耕太郎さんといった流れになるでしょうか。
ニュージャーナリズムについて説明すると長くなりますが、簡単に説明すると従来のジャーナリズムが客観報道を目的としていたのに対して、取材対象との間に個人的な関わりを成立させ事件と生活の実感を伝達しようとするものです。例を挙げると従来型の「フランク・シナトラは心にぽっかり大きな穴があいたような空虚な気持ちだった」という文章をニュージャーナリズムをつくりあげたゲイ・タリーズの文章にすると「フランク・シナトラは、片手にバーボンの入ったグラスを、もう片手に煙草をもち、魅力的だが色褪せた金髪の女ふたりに挟まれバーの暗がった隅に立っていた。女たちは彼がなにか言葉を発するのを待っていたが、彼は口を開かない」になります。とてもアーティスティックな文章だと思いませんか?
1960年10月12日、東京の日比谷公会堂で演説中の浅沼稲次郎社会党委員長が17歳の右翼少年に刺殺されました。少年は現行犯で逮捕されその後11月2日に東京少年鑑別所で自殺しました。毎日新聞のカメラマン長尾靖さんはこの2人が見合った写真を撮り、この写真は1961年にピュリツァー賞を受賞するのです。沢木さんの本書も第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。事実は小説より奇なりとは本当なのかもしれません。

営業推進部R.S.

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スタッフの読後コメント
61歳の全身政治家と17歳のテロリストの魂の交差する瞬間。先日逝去された半藤一利さんの『日本の一番長い日』と並ぶ日本ノンフィクション史上の最高峰。

そごう千葉店S.C.

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